京都まちなか散歩は、神社仏閣ばかりではありません。本日は数々の伝説が残されている、京都市上京区にある「一条戻橋」を目指してぶらり京都まちなか散歩へ出かけてみます。
「一条戻橋」は、南北に細く流れる「堀川」の堀川一条に架かる橋です。かつて一車線でしたが、交通量が多いことから二車線に拡幅されました。何度か架け直されており、現在のものは1995年に整備されました。
以前の様子をご覧になりたい方は、近くの「晴明神社」へまちなか散歩の足をのばしてみて下さい。実際に使用されていた材料を使用し作られたミニチュアが置かれている他、江戸時代の京都の様子を描いた挿絵を見ることもできます。
京都まちなか散歩前に「京都時代MAP 平安京編(新創社編 光村推古書院)」で界隈の散歩道を確認してみたのですが、一条通は平安京の最も北の通りに位置しています。つまり「一条戻橋」は大内裏からは北東の方位となり表鬼門となります。
前述した通り、すぐ近くに陰陽師安倍晴明の「清明神社」があることを考えると、「晴明神社」は都を護る鬼門除けの責務も負っていたのではないでしょうか。
「安倍晴明」にまつわる話以外にも、数々の伝説があります。堀川を渡る(戻橋を渡る)ことは、洛外に出る(京都から離れる)ことを意味していたため、様々な伝説の舞台となり、日常における慣習や縁起の由縁となりました。
このような背景があることから、現代であっても、この地に立つと何となく感じるものがあるようなないような、不可思議な感覚に陥ります。名前は「源氏物語」にも登場したり、文章博士の「三善清行」が蘇生した話や「渡辺綱」が切り落とした鬼の腕を鬼が取り返しに戻ってきた話があるなど、京都のまちでは様々な伝説が語り継がれています。
名前に由来するのか、表鬼門であるからなのかは分かりませんが、京都では縁起を重んじて「一条戻橋」を縁談ごとには避ける人も見られます。このように、縁談には不向きとされている場所ですが、必ず戻って来られると言う願掛けから、旅立ちのスタートとする方も見られます。京都まちなか散歩の始まりの地としても、趣き深いと言えますね。
この界隈は、もともと西陣の織屋が多くありました。そのため子どもの頃は、職工さんたちが染めた生地をざぶざぶ洗っておられたのを、川岸から珍しげに眺めていたものです。「一条戻橋」へのまちなか散歩は、そんな懐かしい京都の記憶を引き出してくれる場でもあります。
さて、本日は秋散歩でしたが、春にまちなか散歩で訪れると脇に咲く「河津桜」を楽しむことができます。3月の初旬に咲き始めるのですが、その美しさは「お見事!」と思わず口にしてしまうほどです。
桜というと一般にはソメイヨシノが浮かびますが、一足先に春気分を感じたい方は是非満開の「河津桜」までまちなか散歩をしてみて下さい。白い橋とピンクの桜、そのコントラストが素晴らしく“魅せられる桜”だと言えましょう。京都まちなか散歩で出会う憩いの場の一つだと思っています。
参考URL
https://ja.kyoto.travel/search-keyword.php?keywords=%E4%B8%80%E6%9D%A1%E6%88%BB%E6%A9%8B
https://www.seimeijinja.jp