花を求めて(大田神社のカキツバタ)

間もなくゴールデンウイークという今日、私の頭に浮かんでいたのは美しい紫の花でした。そこで朝早くから京都まちなか散歩へ出かけた先は、京都市北区にあります「大田神社」です。

「上賀茂神社」の境外摂社の一つで、「上賀茂神社」から500メートルほど散歩した場所にあります。天鈿女命(あめのうずめのみこと)を祭神とし、「長寿信仰」、「賀茂における最古の神社」としても有名ですので、京都観光へ訪れた方も多いのではないでしょうか。

こちらには、建物の中央を参道が通る「割拝殿」という、大変珍しい構造の拝殿があるのですが、あいにく本殿・拝殿は修復中でした。

さて、こちらは一年を通じて多くの方が京都まちなか散歩へ訪れる神社ですが、初夏のお目当ては本日の目的でもある「カキツバタ」です。

境内にある「大田の沢」では、カキツバタの野生群落を見ることができます。国の天然記念物になっており、毎年5月上旬から中旬、おおよそ2000平方メートルの沢は約2万5千株の花で埋め尽くされるのです。これほどの景色は京都中、いや国内中でも珍しいのではないでしょうか。

京都まちなか散歩の足も軽やかに、鳥居をくぐり参道を進んでいきます。すると、沢一面に広がった気品ある紫の花が、私を出迎えてくれました。

なんと気高く、しとやかな姿でしょう。「和」の真髄を体現しているかのようです。「大田神社のカキツバタ」は、平安時代にはすでに知られており、とりわけ「紫」は、最も愛された色ですから、この季節には多くの人々が散歩へ訪れたことだと想像できます。

美しいものを見慣れているはずの平安貴族ですら、「大田神社」のカキツバタには、魅了されたに違いありません。その頃と同じ風景をこうして眺めていると思うと、不思議な気持ちになります。

有名な尾形光琳の作に「燕子花図(かきつばたず)」が思い出されますが、図と同じように一つ一つの花が持つ紫や青といった色彩の違いを濃淡と伴に味わうことができました。

最後にもう少し、境内を散歩してみます。春が過ぎ、夏を迎えようとするこの季節。境内では輝くような新緑が眩しく目を奪われます。爽やかな風が吹く度に、葉から陽の光が降ってくるようでした。

今回は最良なタイミングで京都まちなか散歩へ訪れることができ、気持ちも晴れ渡ります。散歩の足をしばし止め、美しい風景に癒されることにします。

旬のカキツバタに新しい季節の到来を感じつつ、次の散歩先を思案しながら、家路へつくことにしましょう。

参考URL
https://ja.kyoto.travel/tourism/single02.php?category_id=7&tourism_id=243

大田神社