私たちの目と心を、存分に楽しませてくれた京都の桜。これまでに足繁く、花を求めた京都まちなか散歩を楽しんで参りましたが、まちなかではそろそろ散り始めているようです。この時期は大変寂しく感じるのですが、散るからこそ、花たちは美しいのだとも感じる次第です。
本日の京都まちなか散歩は、ふと頭に浮かんだ所にしました。
「まだ御室さんが残ってるさかい」
そんな、わくわくした気持ちになる「御室さん」とは「仁和寺」のことです。京都の人たちは、親しみを込めてこう呼ぶ方が多いですね。
京都市右京区にあります「仁和寺」は「徒然草」や「方丈記」にもたびたび登場する、京都の中でも大変歴史と由緒のある寺院です。世界遺産にも認定され、今や世界中の人々が散歩を楽しまれています。
さて、そんな「仁和寺」での花見散歩では、「御室桜」という個性的な花を見ることができます。4月中旬から下旬に見ごろを迎える、遅咲き品種のため、京都まちなか散歩の「桜の見納め」として、こちらを選ぶことが多いです。
ところが、今年は非常に急な足取りで春が訪れ、また去ろうとしており、桜もこれに伴いとても早く開花しました。私も季節の機運に乗せられ、早々と4月初旬に散歩へと足を運ぶことにしました。
「桜はどんな風情になっているだろう」と思いつつ、見頃を逃してしまっては、後悔すること間違いなしです。逸る気持ちを押さえ、散歩の足が中門をくぐっていきますと、その左手にお目当ての「御室桜」が優しく出迎えてくれました。
「御室桜」は珍しい低木の樹です。大きなものでも、3メートルほどでしょうか。見上げるのではなく、眼前にその美しさが広がるのが特徴です。少し先では五重塔が、桃色の雲海を突き抜けたかのように立っています。
今がまさに満開です。間に合ってよかったと1年ぶりに「御室桜」と肩を並べ、ゆっくりと春をかみしめてながら散歩をしました。
人々へ寄り添うように花を咲かせてくれるこの小さな樹ですが、「お多福桜」という可愛らしい別名を持っています。その所以は、お多福の鼻の低さと、樹の低さをかけているとのこと。このようなエピソードからも、古くから親しまれ、愛されていたことが伝わってきます。
さて今年の春も、たくさんの桜と出逢うことができました。
時代が変わっても、変わることなく巡ってくる春。かつて歴史を駆け抜けた人々と同じ場所で、こうして美しい花を愛でることができる京都まちなか散歩は、本当に素晴らしい時間です。
京都のまちと自然の摂理に感謝しながら、本日の京都まちなか散歩を締めくくることにしましょう。
参考URL
http://www.ninnaji.jp/