今年の京都の春は唐突で、せわしく訪れたように感じます。ずっと待ちわびてきた春ですが、今度は逆に置いて行かれないよう、足早な散歩で追いかけなくてはいけなくなってきました。
京都の地図を脳裏に思い浮かべながら「ここもあそこも見に行かんと!」と、気ぜわしく頭の中を桜が巡っている今日この頃です。本日の京都まちなか散歩は、最初に「立本寺(りゅうほんじ)」へと春探しの散歩へ行こうと思います。
京都市上京区、七本松仁和寺街道にあります「立本寺」は、日蓮宗の本山です。「龍華庭園」と呼ばれる見事な枯山水は京都市の指定名勝で、本堂・刹堂(鬼子母神堂)・客殿(園林堂)・鐘楼・山門(総門)は、京都市指定有形文化財となっており、おすすめの京都まちなか散歩道です。
この「立本寺」の境内には、約40本の桜が植えられているのですが、視線の先には思った通りソメイヨシノが見ごろを迎えていました。
本堂へ続く散歩道は、桜のトンネルさながら。薄桃色の雲に包まれているかのような、不思議な感覚に襲われます。頭上を覆う一面の桜に感動し、胸がいっぱいになりました。
こちらの枝垂桜も、見事に咲き誇っています。地に付くほどの豪快かつ可憐な枝ぶりに、つい見惚れてしまいます。
花の美しさに理屈を求めることなど必要ありませんが、ここ「立本寺」の花たちには、「もう一度散歩へ訪れたい」と思わせる魅力があります。私も虜になってしまった一人ですが、実はこちら「花見の名所」としてはあまり知られていません。
「桜祭り」の時期を避ければ、それほど混雑せず悠々と花の美しさを愛でることができます。のんびりとした春の京都まちなか散歩を楽しまれたい方は、ルートに加えてみてはいかがでしょうか。
とはいえ、この素晴らしい風景をお伝えたしたい思いの一方で、このまま「隠れた名所」でいてほしいと願う気持ちも、少なからず湧くところです。京都まちなか散歩へ行かれ、「立本寺」を気に入られた方は、大切な人にだけお伝え頂ければと思います。
さて、京都まちなか散歩を続けましょう。京都の桜が満開を迎える頃、私が毎年足しげく通う場所があります。京都市北区にあります浄土宗の寺院「地蔵院」です。
京都の人々には「椿寺」と呼ばれ、親しまれています。その名の通り、大変見事な椿と出会うことのできる、とっておきの寺院です。
写真のように、開花情報を門前の札でお示ししてくださるのですが、「今日はどうかな?」と毎日見に来る日が続いておりました。本日はようやく八分咲きになりましたので、早速お参りすることにしました。
散歩の足が境内へ入とるすぐ、私たちを出迎えてくれるのが散椿(五色八重散椿)です。
毎年3月下旬に見ごろを迎えるこの樹木は、白、紅、桃色と様々な色の花をつける珍しい品種としても知られています。
かつて秀吉がこの花を気に入り、「地蔵院」へと寄進したとのことです。現在あるのは分け木をした二代目ですが、それでも樹齢100年は超えているでしょう。一般的には、時期が来れば花弁ごと落ちるのが、「散椿」は、花びらをひらりひらりと一片ずつ散らします。
この特性が、「散り椿」という名の由来であり、遥か昔から愛されてきた所以です。
「椿寺の椿の花は散りてこそ」と正岡子規が詠んだように、「咲く姿」だけでなく「散る姿」でも、人々を魅了してきました。時代が移り変わっても、花の美しさ、そしてそれに惹かれる人の心は変わらないようです。
密やかに、それでいて華やかに京都の随所へ訪れる春。それらを見逃すことなく楽しみたい方は、こうしてゆっくりと京都まちなか散歩へ訪れてみて下さい。この季節は、見るたびに違う風景が目に飛び込んでくるため、飽きることがないでしょう。
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