まだまだ寒い季節が続くこの頃、花を求めての散歩にはまだ少し早く、遠出の散歩をするには冷え込みが厳しい京都です。こんな時には、芸術に触れる京都まちなか散歩をいたしましょう。夏の暑さの中よりも、寒いくらいの方が芸術鑑賞には向いていると感じておりますから、じっくり足を進めて参りたいところです。
本日の京都まちなか散歩の行き先は、京都市右京区にあります「退蔵院(たいぞういん)」といたしました。「妙心寺(みょうしんじ)」の46ある塔頭の一つである「退蔵院」では、日本最古の水墨画であり国宝でもある如拙筆の「瓢鮎図(ひょうねんず)」を拝見することができ、この画を目指し散歩をスタートさせます。
「退蔵院」には、枯山水の庭園も待っていることもあり、寒風なんてなんのその、散歩の足が弾みます。
気候が良ければ臨済宗妙心寺派の大本山である「妙心寺」と合わせて京都まちなか散歩へ訪れるコースもおすすめです。その山内は広大で三門や法堂などの伽藍も巨大で、いつ京都まちなか散歩へ足を運んでも驚嘆します。
あれこれと考えながら散歩しているうちに、「退蔵院」の山門へと到着しました。この門は「薬医門」と呼ばれています。江戸中期に建設され、高貴な薬医のみに与えられた門の形とのことで、落ち着いた佇まいがあります。
ここをくぐるとそこは一瞬で別世界のように、視界が変わります。京都の自然に抱かれ、澄んだ空気を思い切り吸い込むと、全身がエネルギーをまとっていくようです。
さて、いよいよ「瓢鮎図」と対面です。この画は「瓢箪で鯰をおさえることができるか」という禅的テーマで、鯰を瓢箪で捕まえるとはなかなか思いつきそうにない発想ですが、この発案者は室町幕府第4代将軍「足利義持」とのことです。
その命を受け、山水画の始祖とも呼ばれている如拙が、素晴らしい筆遣いで書き上げたこの作品は、見れば見るほど考えさせられます。画の上には、京都五山の高僧31人の画に対する回答が並んでいました。
しかし、見ただけで何が書いてあるのか理解するには難しく、その詳細はどんなものだろうと知りたい欲でいっぱいになります。
これは禅問答であり、禅の世界ではこのような問いかけを多く解いていくことで悟りを開いていくという理なのだと思います。
画をじっと見つめてみるものの、やはり凡人の私には、その解が思い浮かぶことなどありませんでした。瓢箪を持つ男の様子が少しぎこちなく滑稽な感じがありましたが、ただ何とも不可思議な画であるなとの印象を持ちました。
この画は、現在的に言うとパラダイムシフト、要は発想の転換なのだと思います。時が違えばまた別の考えが浮かぶかもしれません。また別の機会の京都まちなか散歩で、再度腕組みをしながら対峙してみたいと感じました。
再び外へ出て散歩を続けましょう。歩いていくと、陰陽の庭につきました。この庭は敷いてある砂が二色に分かれていることから陰陽の庭と呼ばれているそうで、人間の気持ちや様々な出来事の二面性を表しているとのことです。私の心にある二面性も見透かされているような、そんな庭でしばし佇みます。
庭を楽しんだあとは、音へ癒されに行きます。こちらが奥にある「水琴窟(すいきんくつ)」です。澄んだ音色には、わびさびの風情がありますね。心地よい音で心身をリラックスしたところで、本日の京都まちなか散歩は終わりにいたします。
参考URL
http://www.taizoin.com/