まだ五月だというのに、初夏を思わせる日が続いております。今年の京都の四季は、加速度的に移ろいますので、しだれ桜などの鑑賞タイミングを何度も逸してしまいました。
しかしこの陽気ならば、ひょっとしたら桔梗が既に咲いているかもしれません。そんな思いが芽生えた瞬間、早速京都まちなか散歩へ出かけることにしました。
向かった先は御所の東、寺町通沿いにひっそりと佇んでいます「蘆山寺(ろざんじ)」です。
「蘆山寺」は、女流作家「紫式部」の邸宅跡として有名です。「紫式部」の曽祖父である権中納言藤原兼輔がこの寺院を邸宅とし、「紫式部」へと継がれました。「紫式部」は、結婚後も住まいとし、生涯のほとんどをこの邸宅で過ごしたとのことです。「源氏物語」も、この地で執筆されたと言われています。
散歩の足が境内に入りますと「紫式部」と長女である女流歌人「大弐三位(だいにのさんみ)」、母娘ふたりの歌碑が建てられていました。
「蘆山寺」には、「源氏庭」と呼ばれる素晴らしい庭園があり、可憐な紫の花弁をつける桔梗が植えられています。
桔梗は、6月から9月にかけて鑑賞できるとのことでしたが、結果的には私の気がまだ少し早かったようです。まだ訪れる人の少ない境内には、京都ならではの落ち着いた風情が漂っておりました。後日に再訪し、白川砂に浮かぶ苔の島に立つ美しい桔梗を見に散歩へ参ろうと思います。
源氏庭の桔梗だけでなく、私はなぜか「紫の花」に、強く惹かれてしまいます。すぐそこまで梅雨が来ていますが、これからの季節は、紫陽花との出会いも楽しみとなります。色とりどりに咲く紫陽花の花の光景も、また京都まちなか散歩にて探しに行こうと思います。
蘆山寺を後にし、ぶらりと「御所」へ散歩の足を延ばします。こちらは、五摂家の一つ九條家の邸跡です。
こちらは「拾翠亭(しゅうすいてい)」と呼ばれる、風情ある建物です。江戸時代後期に建てられたもので、三畳と十畳の茶室が二部屋あります。窓から見える風景は、額に飾られた絵画さながら。九條池にかかる石橋や、四季折々の花や木をのんびり眺めることができる、とっておきの京都まちなか散歩先です。
また「拾翠亭」は、茶会、俳句・和歌・短歌の会、読書会、謡曲会(素謡)、歴史研究会、漢詩研究会(吟詠)などの行事に限り貸出しもされているとのことです。
このような素敵な場所での集まりであれば、雅な趣きを感じつつ、詩を吟じることができるのではないでしょうか。
参考URL
https://fng.or.jp/kyoto/place/history/#shusuitei
ひっそりとした御所をそぞろ歩いておりましたら、九條池の傍にある京都三珍鳥居で有名な「厳島神社」を思い出し、お参りしました。
ふとした縁で趣ある所に出会うのも、まちなかぶらりんの良いところと言えるでしょう。
参考URL
http://www7a.biglobe.ne.jp/~rozanji/index.html